- 文●ハッチ

NVIDIAは11月2日、都内某所にてCPUとGPUをチップレット構成で統合したスーパーチップ「NVIDIA RTX Spark N1X」を採用するWindows PCプラットフォーム「NVIDIA RTX Spark」のメディア技術説明会&ハンズオンデモ・パートナー製品ショーケースを実施した。まず最初にNVIDIA 日本代表 兼 米国本社副社長の大崎 真孝氏が登壇。その後、各パートナー企業の代表者が挨拶を行った。

大崎氏はRTX Sparkについて、「AIであり、スーパーコンピューターであり、ゲームも楽しめる」と表現。展示された各社の製品はラップトップ(ノートPC)でありながら、中には1PFLOPS(ペタフロップス)の超高性能な半導体チップが搭載されている。1PFLOPSとは1秒間に1000兆回の演算を実行できるスーパーチップだとアピールした。


大崎氏はこれまでAIの話をする際は、データセンターやスーパーコンピューターの話をしてきたが、今回発表したRTX Sparkは、パーソナルな環境でパーソナルなAIを実行できる、これまで以上のゲーム、シミュレーションができるPCだ。RTX Sparkは、少し前のこの部屋では収まりきらないほどに大きなスーパーコンピューターのような処理を実行できるテクノロジーだ。
そのうえで、RTX SparkはAIエージェントを実行する、私たちのパートナーになる。研究者、技術者、そして学生の皆様も、クローズドな環境でAIを実行できる。また、同時に最新鋭のゲームを楽しんだり、プロフェッショナルなデザインをしたり、シミュレーションをしたりができる環境が登場した。
これから、日本でもRTX SparkでAI、そしてゲーム、シミュレーション環境を、パートナーの皆様と一緒に切り開いていきたいと思うと語った。
パートナー6社がRTX Spark搭載PCの展開方針を説明

次にパートナー企業として、ASUS JAPANの株式会社 システムビジネスグループコンシューマー事業本部統括部長 David Chu氏が登壇。先端技術をユーザーへ提供する方針を示し、NVIDIAと緊密に連携してRTX Spark製品を市場へ投入していく意向を述べた。


デル・テクノロジーズ株式会社 執行役員 コンシューマー&Eコマース営業統括本部 統括本部長 文 英梅氏は、RTX Sparkを搭載するXPS 16 Creative Editionを発表。今後、XPSだけでなくRTX Spark搭載製品をさらに導入していきたいとの意向を示した。


株式会社日本HP パーソナルシステムズ事業部 事業本部長 柳澤 慎吾氏は、開発者や起業家からローカルでAIを利用できることへの期待が大きいと説明。HPの製品では、性能を発揮するための排熱と、日本のユーザー向けの携帯性に注力したと語った。

レノボ・ジャパン合同会社 執行役員常務 Tony Lee氏は、「Smart AI for all」のビジョンのもとNVIDIAと連携し、AI開発者、クリエイター、一般ユーザーの目的に応じた製品提供を目指すと説明。IFAで発表したYOGA Pro 9nを含む2モデルにRTX Sparkを搭載すると説明。そのYoga Pro 9nは本日から同社の直販サイトにて販売が開始とされたと語った。

日本マイクロソフト 業務執行役員 コンシューマチャネル事業部 Surface戦略本部長 當野 喬之氏は、NVIDIAとの長年のパートナーシップを踏まえ、RTX Sparkを搭載するMicrosoft Surface Laptop Ultraを発売したと発表。

エムエスアイコンピュータージャパン株式会社 社長 Ricky Chiang氏は、RTX Sparkの発売をAI時代をより身近にする大きな一歩と位置付け、今後もNVIDIAとともにAI新技術をより多くの顧客へ届けたいとの考えを示した。



Blackwell GPUとGrace CPUをチップレット構成で統合した新SoC
次にNVIDIAテクニカルマーケティングディレクターのJeff Yen氏がRTX Sparkについて技術説明を行った。同社は25年間、15世代のGPUアーキテクチャーを通じて、グラフィックスを開発してきた。Microsoft DirectXとプログラマブル化し、CUDAを組み込み、RTX製品を展開。レイトレーシングとAI技術を含む、ゲームやクリエイティブ制作、AI処理などを高速化するためのハードウェア、ソフトウェアの技術基盤である「RTX Stack」を確立し、市場には1億5000万台のRTX搭載PCが出回っている。

昨年発売されたRTX Blackwellアーキテクチャは、最新世代のCUDAコア、Tensorコア、ビデオエンジンを搭載。Blackwellラインナップでは、GPU性能が上がるほどメモリも増える傾向にあり、より大きなフレームバッファによって、より多くのクリエイティブワークロード、ゲームワークロード、AIワークロードが可能になる。
こうした中、今年はローカルAIエージェントにとって飛躍の年になったとNVIDIAは説明する。年初からOpenClawやHermesといったエージェントのダウンロード数と普及速度が示すように人気は急騰し、ユーザーのニーズは「ゲームとクリエイティブ」に加えて「ローカルAIモデルの実行」へと拡大している。これこそがRTX Spark誕生の大きな理由だとしている。
2つのタイルをNVLink-C2Cで接続、バッテリー駆動でも高性能を維持
RTX Sparkは、BlackwellアーキテクチャーのRTX GPUと、最大20コアのNVIDIA Grace CPU、最大128GBのユニファイドメモリを統合したスーパーチップで、NVLinkのチップ間インターフェイス(C2C)で相互接続する。チップは2つのタイルで構成され、NVLink C2Cで接続されている。

一方はBlackwell GPUタイルで、実質的にフルGPUであり、求められるコアがすべてそろい、RTコアとTensorコアを備え、最大1PFLOPS(FP4)のAI演算性能を発揮する。タイル間のC2C接続のもう一方の側にはCPUタイル(CPU I/O)があり、これはMediaTekとの協業によって開発されたNVIDIA Grace CPUを採用。高速I/Oやメモリーインターフェイスなども統合している。


RTX Sparkは低消費電力メモリと高効率なGrace CPUにより、電力効率に優れる。これまでのノートPCは、電源を外すと性能が低下していたが、RTX Spark搭載機はNVIDIAによると、同社が示した特定の性能比較では、バッテリー駆動時でも電源接続時の約98%の性能を維持できるという。
RTX Sparkは最大128GBのユニファイドメモリを備え、ゲーミング、クリエイティブ、ローカルAIエージェントという3つの用途を1台のWindows PCでカバーする。NVIDIAによると、バッテリー駆動時でも全体性能の約98%を維持できるという。


AIエージェントによってPCは「道具」から「チームメイト」へ
ローカルAIエージェントの構成要素は以下のとおりで、隔離された安全なサンドボックスの中に置かれ、多くのツールが呼び出せる。通常のLLM(大規模言語モデル)が主に質問への回答や文章生成を行うのに対し、AIエージェントはユーザーの指示に応じて外部ツールやアプリケーションを呼び出し、複数の工程を経てタスクを完遂する。

同社は、これはPCを「道具」から「チームメイト」に変えるものだとしている。最初は慣らしに時間がかかるものの、生産性を高め、カレンダーや受信箱へのアクセス、スケジュール整理、トラッカー更新ができる。クリエイティブ系エージェントは生成AIワークロードを実行する制作アシスタントのような存在であり、開発者はGitHubの監視に、ゲーマーはゲーム体験全体の強化に使えるとのこと。
ローカルAIのメリットは、クラウドにデータをアップロードせずに処理できることだ。機密情報を含むデータも、ローカル環境で処理する構成であれば、外部に送信することなく活用できる。加えて、現在クラウドでAIをよく利用するユーザーは、トークンの上限に悩まされ続けているが、ローカルでならその悩みもない。
同氏はコスト面のメリットとして、約6,100万トークンをクラウドAIで処理した場合は約1,200ドルかかる一方、同規模の処理をローカル環境で実行すれば、電気代は約20ドルに抑えられるという試算を紹介した。
こうしたローカルAIエージェントは、モデルの進化により実用的になったという。かつてクラウドのフロンティアモデルは精度でローカルモデルに6〜8か月先行していたが、現在は約2か月にまで縮まった。そのため、以前より高い精度でローカルの結果は信頼できるとのこと。
とはいえ、フロンティアモデルのユースケースはなくなるわけではなく、重要だとしている。そのため、「ハイブリッドアプローチ」が良いやり方で、同社のNeMo Switchyard Verifierが役立つとしている。簡単なAI処理はローカル環境で実行し、ローカル環境では対応しきれないものは振り分けて、高度な処理だけをクラウドAIに任せるなど、全部自動で振り分けてくれる。

また、Qwen 3.8を素晴らしいローカルモデルと評価しつつ、同同社のAIモデル「Nemotron 3.5 Bolt 74B-A9B 24GB」も紹介した。総パラメータ数は約740億、アクティブパラメータ数は約90億で、ローカル環境でのAIエージェント処理を想定して開発されたモデル。完全にオープンで、ライセンス料は完全無料で、性能も非常に高いとアピール。RTX Spark上で実行でき、他のモデルもサポートするとしている。

さらに、ローカルAIのエコシステムは急激に成長し、RTX Sparkのアプリも同じくらいの速度で増えている。同社はあらゆる開発者と協力し、NVIDIA App、Broadcast、RTX Remixなど、これらすべてをRTX Spark上で快適に動くようにしている。主要なエージェントはRTX Spark向けに最適化されており、GitHub CopilotからWorkBuddyまで、どのエージェントを選ぶかはユーザーの自由だと語った。
加えて、近年クリエイティブの分野でも、GPUの利用は動画生成・画像生成へと進化し、RTX SparkではクリエイティブAIエージェントの普及に向け、最大128GBの大容量メモリを活用し、クリエイターが大規模なAIモデルや生成AI処理をローカル環境で実行できる。
クリエイターはすべてのツールの使い方を知っているとは限らないが、クリエイティブAIエージェントを使用すれば、目標に応じてさまざまなアプリを経由して支援する。スケッチをアニメーションに変換することも可能だとのこと。

ゲーミングもNVIDIAにとって重要で、GeForce向けの技術すべてがRTX Spark上で動作することが保証されている。トップ100タイトルのうち97タイトルが、RTX Sparkで動作するという。ただし、eスポーツのタイトルは、アンチチートという壁がある。すぐにはすべて対応できないが、カスタムカーネルサポートとともに順次対応していく。
EAのJavelin AnticheatやActivisionの『Call of Duty』シリーズなどは対応が進んでおり、Riot Gamesのアンチチートについても『League of Legends』や『VALORANT』への対応が発表されている。ただし、対応時期や実際の動作状況については、タイトルごとに確認が必要だ。
また、技術説明ではDLSS 5の「3D-Guided Neural Rendering」によるライティングやマテリアル表現の向上、ベンチマークについても触れた。ベンチマークは、いろんな評価方法があるが、AIベンチマークは変化が早すぎることが問題。処理が速くても、答えが間違っていたら意味がないので、精度も考慮する必要がある。どのモデルを使っているかの事前の把握も必要だと語った。
AIエージェントによるタスク処理や動画編集、ゲームのデモを披露
デモ展示エリアでは、AIエージェントで日々のタスクを処理するデモや、動画編集をエージェントに任せられるデモ、動画生成、ロボットの制御などのデモが確認できた。






ゲームにおいては、DLSS 5のデモや、アンチチート対応のゲームもプレイできるようになったとデモでアピールした。以下、DLSS 5のオフ/オンの映像比較。
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アンチチートに対応する『Marvel Rivals』も問題なく快適に動作するとしている。

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