- 文●いちえもん 編集●ハッチ

『ピザ・バンディット(Pizza Bandit)』は、韓国のインディーゲームスタジオ「JofSoft」が手がけた協力型シューティングゲームだ。8月26日からPC(Steam/Epic Games Store)にてアーリーアクセス中だ。

本作は最大4人の協力型シューターだが、興味深いのは「料理をしながら戦うゲーム性」だ。仲間と協力しながら敵と戦いつつ、分担して料理を作るといったユニークなゲーム性がネットでも話題になっている。そこで本稿では、『ピザ・バンディット』のプレイレビューをお届けしたい。
夢のピザ屋を開業すべく、戦場で金稼ぎに励む元傭兵の話
『ピザ・バンディット』の主人公は元傭兵のマリク。かつては「タイムリーパー」と呼ばれるエイリアンを倒す仕事をしていたが、彼には大きな夢があった。それは、”ピザ屋のシェフになる”こと。コックの夢を叶えるべく、マリクは傭兵の仕事を辞め、一念発起でピザ屋の物件を購入する。


グランドオープンさせようと思った矢先、マリクは店内の様子に愕然とする。なんとその物件はピザ窯があるだけで、店内はスッカラカンだった。悪徳不動産業者にすっかり騙されてしまったのだ(契約書の但し書きをしっかり読まなかったせいでもあるが)。



業者にすっかり騙されてしまったマリクだが、お店を再建させるための資金を稼ぐべく、傭兵の世界に再び舞い戻ることに。タイムリーパーが徘徊する世界を宇宙船で飛び回り、各地でミッションをこなしていく。果たして、銀河一のピザ屋を開業できるのだろうか?


以上が『ピザ・バンディット』の大まかなあらすじだ。元傭兵の料理人と聞くと、スティーブン・セガールのアクション映画『沈黙の戦艦(1992年 米)』を思い出す。細かい話をすると、セガールが演じた主人公のコックは元海軍特殊部隊の指揮官である。
時代設定や舞台はまったく異なるが、戦闘能力高めの料理人という設定が唯一の共通点と言えるだろう。『ピザ・バンディット』をプレイした際、筆者はなんとなく『沈黙の戦艦』のセガールを思い出し、ゲラゲラと笑ってしまった。笑いを誘うネタが異常なまでに盛りだくさんなので、本作がバカゲーと呼ばれるのも納得がいく。

脳筋のアクションヒーローがピザ屋のシェフを目指すストーリーなど、ギャグ色が強すぎる作風が『ピザ・バンディット』の魅力だ。最初から笑いが暴走しまくっていて、無表情を保てないほどである。本作のストーリーに少しでも笑みを浮かべたら、それはツボに入っている証しかもしれない。
”料理を作りながら敵と戦う”というぶっ飛んだゲーム性
『ピザ・バンディット』は、ミッションクリア型のアクションゲームだ。時空間移動が可能な宇宙船に乗り、時代が異なる世界を飛び回ってミッションをこなす。そしてミッションを達成したら、船に戻って拠点のピザ屋に戻るといった流れだ。


ちなみに、出撃前にピザを調理・食べることで、攻撃力アップや体力アップなど、ステータスアップのバフを得られる。トッピングによってステータスアップの効果も変化するようだ。なお、トッピングの食材はミッション遂行中にゲットできる。



操作性はよくある三人称視点のシューターと同じだ。メインウェポン、サブウェポン、近接武器、装備品を持ってカオスな戦いに臨む。初期装備はアサルトライフル、ハンドガン、近接武器のピザカッターのみで、レベルアップの報酬や買い物で新たな装備が追加されていく。

一見すると従来の協力型ゲームと変わりないのだが、その中でも本作は特殊と言ってもいい。なぜなら、”料理を作りながら敵と戦うゲーム”に仕上がっているからだ。
料理をしないミッションも一部含まれるが、ほとんどのミッションは料理+戦闘が主軸となっている。テンポの速い戦闘のついでに料理を作るなんて、クレイジーと言わざるを得ない(褒め言葉)。

たとえば、日本を舞台にしたミッションは、敵と戦いながら寿司を作って客に提供することが目的(ピザ屋なのになんで寿司?)。敵のウェーブ戦をこなしつつ、マグロや卵焼き、かっぱ巻きの3種類を調理する。調理に必要な食材を回収し、決められた方法で調理し、出来上がった料理を持って特定の場所へ運ぶだけだ。



食材回収→調理→提供までの工程をこなすだけなら簡単だが、問題は複数の敵がプレイヤーに襲い掛かってくることだ。本作のアクションパートは、時間経過で出現するウェーブ形式を採用している。そのため、波のように押し寄せてくる敵を対処しつつ、その合間に料理を作らなければならないのだ。
ただ単に敵を倒すだけでなく、複数のタスクを効率よくこなすスキルも求められると感じた。マルチタスクゲームの側面も強いと言えるだろう。見た目はバカゲーだが、実際は頭脳をフル活用させるアクションゲームということだ。「バカにしちゃいけないぜ」と言わんばかりの難易度に驚いてしまった。

料理×戦闘の組み合わせはユニークでありながら、マルチタスクの難しさを加えたことで、ハラハラドキドキのゲーム体験が味わえるようになっている。多種多様の敵を倒す爽快感と、戦闘の合間に料理を作るスリルを同時に体験できるのだ。名作ゲームの良いところを掛け合わせた結果、唯一無二の面白さを生み出すことに成功している。
ただし、現在はアーリーアクセスの段階なので、与えられたミッションを繰り返し遊ぶことしかできない。そのため、現状のコンテンツを一気に遊んでしまうと作業感が際立ってしまい、マンネリになるかもしれない。長続きさせるための課題が残っているが、今後のアップデートに期待するしかないだろう。
ソロで遊ぶか、それとも最大4人の協力プレイで遊ぶか
『ピザ・バンディット』はソロ、もしくは最大4人の協力プレイが可能だ。もちろんソロでも遊べるが、料理担当と戦闘担当という風に、複数人で作業を分担させたほうが攻略しやすいと感じた。チームワーク重視のゲーム性は、本作に影響を与えたとされる『Overcooked!』を彷彿とさせるものがある。
逆をいえば、ソロの場合はワンオペ状態でミッションに挑まなければならない。当然だが料理も戦闘もぜんぶ1人で行うため、難易度も多少上がってしまうのだ。今回はソロプレイで遊んでみたが、本作がバカゲーであることを忘れさせるぐらいの過酷さを味わった。従業員が欲しいと切実に思ったぐらいだ。

とくに難しいと感じたのは、シビアすぎるリロード。リロード中に回避を行ったり別の武器に切り替えたりすると、途中であってもキャンセル扱いになってしまう。つまり、最初からリロードをやり直す羽目になるのだ。
リロードが完了するまで安全な場所に待機するか、攻撃が当たらないよう走りまわる必要がある。リロード中の時間が一番の隙になるため、タイミングを見極めるという難しさが生まれる。こういうときに仲間の援護があればなぁ……。

本作をプレイ中、「ワンマン経営はつらいよ……」と、ため息交じりで呟くハッチ社長をふと思い出した。ソロプレイでも遊べなくはないが、個人的には協力プレイのほうが盛り上がるかもしれないし、作業効率も上がるかもしれない。
しかし、新しい武器や装備がアンロックされていくと、難易度も少しずつ緩和されていく。加えて、武器や装備の強化もできるため、ソロであろうと協力プレイであろうと、高難易度のミッションに挑みやすくなるだろう。個人的には協力プレイのほうが効率的だが、どちらのプレイスタイルで遊ぶかはプレイヤー次第だ。

稼いだ金でピザ屋をリフォーム! ついでに武器の購入も
『ピザ・バンディット』は敵と戦いながら料理をするシューティングゲームだが、ピザ屋のリフォームを楽しむ要素もある。ミッションで稼いだお金で、家具や調理用器具、模様などを自由自在にアレンジできる。



ピザ屋の再建を進めるほど、マリクも強くなっていく。模様替えをするたびに「プレスティージオ・スコア」が少しずつ上昇し、一定のスコアに達すると攻略に役立つパッシブを付与できるように。ピザ屋の再建が単純な自己満足ではなく、攻略にしっかり紐づけされているところが素晴らしい。
物を持って移動する際のスピードが上がる、任務達成時の賞金が上がるなど、攻略に役立つものばかりがそろっている。攻略するうえで、ピザ屋のリフォームは不可欠と言えるだろう。

さらに、稼いだお金で武器・装備の購入や強化も可能だ。序盤は稼ぎが少ないけれども、難易度を上げてクリア済みミッションに挑んだり、実績を解除したりすることでお金が増えることも。このように金策方法がとても豊富なので、資金繰りに困ることはないだろう。



本作をプレイしてみて、ピザ屋の経営があったらいいのではないかと思った。1人、もしくは仲間と一緒にピザを作って客に提供するというものだ。
現在は敵との戦い+料理のアクションがメインだが、戦ってばかりだといつか飽きが来るかもしれない。であれば、ピザ屋を経営するシミュレーション要素もあったらより一層面白くなるのではないか。JofSoftさん、ご検討のほど何卒よろしくお願いいたします。
まとめ:未完成だけれどもやり応え十分なアクションゲーム

『ピザ・バンディット』は、敵と戦いながら料理を作るという奇抜なコンセプトをはじめ、ソロでも協力プレイでも楽しいミッションや理想のピザ屋を再建する要素が魅力のアクションゲームであった。ぶっ飛んだ協力型ゲームをやりたい人におすすめできる。4人いればパーティーゲームのワイワイガヤガヤ感を味わえるかもしれない。
注意すべきは、本作が未完成であることだ。執筆時点での評価は「面白いけれども長く遊べるかどうかは不明」といった感じだ。
現状のやり込み要素は、最高レベルに到達する、用意されたステージの全難易度をクリアする、ピザ屋のリフォームを完璧に仕上げる、実績を解除するくらいだ。それでもプレイボリュームがまだ足りないため、エンドコンテンツなど、やり込み要素の拡充が望ましいと感じた。その点に関しては、今後のアップデートに期待するしかないだろう。
そんな『ピザ・バンディット』は課題が多少あるものの、プレイヤーを虜にするほどのポテンシャルが秘められている。アーリーアクセス段階でもやり応え十分のアクションゲームに仕上がっているので、料理とバトルのマリアージュを味わってみたい人は本作を手に取ってみてほしい。
『ピザ・バンディット』Steamページ
https://store.steampowered.com/app/2475010/Pizza_Bandit/
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