- 文●宮里圭介 編集●ハッチ

ゲーミングPCに明確な定義はないが、大雑把なイメージで言えば、ミドルクラス以上のCPUとビデオカードを搭載している高性能PC、といえるだろう。PCでゲームを楽しむならゲーミングPCは必須、という印象があるため、「きっと、みんなこういったゲーミングPCを買ってプレーしているんだろうな」と考えるのは自然だ。
しかし、ゲームを楽しむといっても、PCの性能差が大きく影響する競技性の高いゲームをプレイする人ばかりではない。また、誰もが高解像度・高画質で遊んでいるとも限らない。つまり、高性能なゲーミングPCではなく、普通のPCでゲームを楽しんでいる人は結構多いのではないだろうか。
では、実際どんなスペックのPCを使っているだろう。この疑問の答えを知るのは難しいが、そのヒントとなる情報はある。それが、「Steamハードウェア&ソフトウェア調査」だ。

参考リンク:https://store.steampowered.com/hwsurvey/
これは、Valveが毎月調査しているデータで、Steam利用者のハードウェアやソフトウェア環境をまとめてくれているもの。現在公開されているのは「September 2025」とあるので、9月末時点でのデータだろうか。
この中から気になる部分をいくつか紹介したい。
Windows 10のサポートが終わるけど、11への移行って進んでる?
個人的に最も気になっていたのは、10月14日でサポートが終了となるWindows 10の利用者がどのくらい残っているのか、ということだ。
Windows 11は、ゲーム性能が低下するという問題をちょいちょい起こしており、ゲーミングPC購入時にはWindows 11を避け、あえてWindows 10構成で購入したという人もいるだろう。あとから無償でWindows 11へのアップグレードできたというのも、「とりあえずWindows 10で」という選択がしやすい理由となっていた。
今ではWindows 11で問題が起こることは少なく、アップグレードできる人ならもう移行しているハズ。Windows 10を使っているとすれば、Windows 11がサポートしない古いPCを使っている一部の人だけではないか、と考えられるわけだ。
ということで、「DX10/11/12 システム」の詳細から、Windowsバージョンごとの利用割合データを見てみよう。

SEPの調査結果を見ると、Windows 11が最も多いというのは期待通りだが、問題はその割合。約66%しかなく、Windows 10を使っている人が約34%も残っているのだ。
古いPCを使っている人にしては、さすがに割合が多いように感じる。Windows 11に対応していないゲームソフトをプレーしたいから、あえてWindows 10を残している……という人もいるとは思うが、どちらかといえば、Windows 10のサポートが終わるとはいえ、現状問題なく動いているからそのまま使っている、という人が大半ではないだろうか。
とはいえ、MAYから順に増加率を見てみると、1%前後で動いていた利用者割合がSEPでは急に2.9%も増えている。つまり、先月は「そろそろWindows 11にしないとな」と思って行動した人が多かったのだろう。
さらにサポート終了直前の10月ギリギリになってアップグレードしたり、PCを買い替えたりする人がどのくらいいるのか。これは来月、そして再来月のデータを見ると読み取れると思うので、ちょっと楽しみにしている。
CPUの実コア数は6コアがトップ、8コアが2位だが……3位は?
CPUについてはモデル名ではなく、メーカーの割合と実コア数、動作クロックといった細部しか公表されていない。
メーカーシェアを見てみると、Intelが約59%で、AMDが約41%。MAYからの推移を見ると、徐々にAMDへと傾いているとはいえ、まだIntelの方がシェアが高いという状況だ。

実コア数のシェアを見てみると、1位は6コアで、2位が8コア。これは、シェアの高いIntelにおいて、Core i5は第12世代までは6コア、Core i7でも第11世代までは8コアだったことを考えれば、なるほどと納得できるデータだ。また、AMDにおいてもRyzen 5/7のコア数と一致しているため、順当な結果だといえるだろう。

驚いたのは、3位に4コアが入っていること。多コア化が進んでずいぶん経つうえ、Intelも第12世代以降はEコアを混載するようになり、コア数が大きく増加した。にもかかわらず、4コアが3位というのはなんとも不思議だ。
Intelのデスクトップ向けでは、第8世代以降Core i5でも6コアとなるため、4コアはCore i3、もしくは第7世代以前のCPUということになる。第8世代の登場は2017年となるため、さすがにこれ以前のCPUを使っている人の割合と考えるには高過ぎる。
しかし、モバイル向けと考えるとどうだろうか。第12世代以降はEコアの混載により実コア数が増えているが、第11世代まではCore i7であっても4コアだ。モバイル向けの第11世代は2020年の登場となるため、今現役であっても不思議はない。
AMDのCPUでは4コアは少ないのだが、思い当たるモデルというとRyzen 5 3400Gがある。前モデルのRyzen 5 2400Gと違ってWindows 11でもサポートされていること、内蔵GPUがRadeon Vega 11で性能が高めということもあり、ASRock「DeskMini A300」で小型ゲーミングPCを自作した、という人も多かっただろう。
ゲーミングノートPC搭載のCPUや、小型PCのCPUと考えれば、4コアCPUが3位という結果も理解できる。
続いて動作クロックを見てみよう。
Intel CPUの動作クロックシェアは、1位が2.3~2.69GHzと低め。この辺りはモバイル向けCPUや、デスクトップ向けのエントリークラスCPUが該当するため、納得感がある。

2位は大きく変わり、3.3GHz~3.69GHzと高い。こちらはデスクトップ向けだろう。とくに倍率ロックフリーとなる末尾「K」のモデルは動作クロックが高く、ゲーミング性能で有利となることが多かった。こういった高性能狙いのCPUユーザーが、結構な数いると考えられる。
AMDはどうかというと、これがIntelと傾向が全く異なっている。

シェアの順位は、動作クロックの高い順というシンプルなもの。とくに1~3位は明確な差があり、高クロックほど好まれているようだ。
これはIntelと違ってモバイル向けCPUのシェアが少なく、ほとんどがデスクトップ向け、しかもゲーミング性能重視の人が多いという傾向といえそうだ。
IntelとAMDでここまで傾向に違いがあるというのは、なかなか興味深い。
GPUはかなりバラけるが、NVIDIAの強さは一目瞭然
ビデオカードはGPU別のデータとなっているので、これを見ていこう。

シェア1位で4.84%、10位でも2.2%となっており、かなりの混戦状態となっている。しかし、リストを見てまず気づくのは、NVIDIA GeForce RTXシリーズの強さ。1~9位までを独占しており、10位になってやっとAMD Radeon Graphicsが出てきたくらいだ。
GeForce RTX 3000シリーズは少し古いのではないかとも思ったが、GeForce RTX 3060の登場は2021年2月とそこまで古くなく、今でも現役だというのは納得だ。
少し驚いたのは、1位にGeForce RTX 4060 Laptop、9位にGeForce RTX 3060 Laptopと、ノート向けのdGPUが入っていたこと。CPUの4コアが3位というのにも驚いたが、こうしてみると、ゲーミングノートPCでプレーしている人が結構な率でいるということがわかる。
ちなみに、AMDのdGPUが登場するのはRadeon RX 6600が最初。わずか0.92%とはいえ、Radeonシリーズの中では上位だ。なお、その次はRadeon RX 7800 XTの0.72%となる。
とくにゲームをプレーする人にとって、ビデオカードのGPUといえばNVIDIAのGeForce RTXシリーズが第一候補になるんだな、というのがよくわかる結果といえるだろう。
CPUではAMDがシェアを延ばしているが、GPUでもAMDの奮闘に期待したい。
他にも多数のデータがある!
漠然と眺めているだけでは数字が並んでいるだけにしか見えないデータだが、少し詳しく見ていくだけで、色々な情報が読み取れるのが面白い。
今回はOS、CPU、ビデオカードについての情報を見たが、これ以外にもメモリー、VRAM、ディスプレーの解像度、言語、ストレージ容量などのデータもある。
世間一般ではなく、Steamを使っている人に限られているとはいえ、どんなPCが使われているのかがわかるのは興味深いところ。他の人のPC環境はどうなっているのか気になる人は、チェックしてみると楽しめるだろう。
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