- 文●いちえもん 編集●ハッチ

『パラノマサイト FILE 38 伊勢人魚物語』は、スクウェア・エニックスが販売するミステリーアドベンチャーゲーム。2月19日よりNintendo Switch、PC、iOS、Androidのプラットフォームにて発売予定だ(PCは2月20日)。
本作は、2023年に発売されて好評を博した『パラノマサイト FILE23 本所七不思議』のシリーズ最新作。「人魚伝説」を題材に、伊勢志摩地方で発生した不可解な事件を解き明かすストーリーが描かれる。複数のキャラクターが登場する群像劇や360度見回せる「全天球背景」のシステム、素潜りのミニゲームなども特徴だ。
今回、『パラノマサイト FILE 38 伊勢人魚物語』(PC版)を発売前に試遊、ならびにクリアできたので、レビューをお届けしたい。
伊勢志摩が舞台のシリーズ最新作、続編の成功例に当てはまる出来栄えだった
前作の『パラノマサイト FILE23 本所七不思議』は、墨田区に伝わる「本所七不思議」の怪談を題材としたミステリーADV。オカルトブーム真っただ中の昭和後期が舞台で、「呪詛珠」を偶然手にした人々が「蘇りの秘術」をめぐる”呪い合い”に巻き込まれるといった内容だ。
墨田区に実在するスポットを背景に、個性豊かなキャラクターの視点で呪い合いの裏に隠された真相を探っていく。群像劇スタイルのシナリオ進行は筆者が好きなサウンドノベルゲームを連想させ、プレイ直後に「これは好きなやつだ」と食指が動いた覚えがある。その結果、「パラノマサイト」シリーズの虜になったというわけだ。



さて、最新作の『パラノマサイト FILE 38 伊勢人魚物語』は前作と同じく昭和後期の話(前作から数年後)だが、舞台は三重県の「伊勢志摩」。天照大御神を祀る「伊勢神宮」や素潜りで海産物を獲る「海女さん」、リアス式海岸などで知られるエリアだ。



今回は平安時代から語り継がれてきた「人魚伝説」がテーマで、伊勢湾に浮かぶ「亀島」に代々伝わる”呪い”と人魚の謎を調査することになる。複数のチャプターを読み進め、ときには他のチャプターに影響を与えながら、複雑に絡み合った真相を解明することが目的だ。


『パラノマサイト FILE 38 伊勢人魚物語』は、数百年にわたる呪いの因果を紐解くミステリーが展開される。ひとつの謎から複数の謎が派生する流れはそのままだが、ストーリー全体のクオリティは前作以上に向上しているように感じられた。よりミステリアスに、より壮大になった印象を受ける。
既存IPの続編は当たり外れが激しい傾向にあるが、本作は「当たり」と言っても過言ではない。見事の一言に尽きる。続編の成功例に加えてもおかしくない出来栄えだった。




チャプターの開放条件が難しい箇所もあるが、自力で解き明かしたときの達成感は格別だ。作中に隠されている仕掛けを発見した瞬間、「えぇっ?!」と驚くか、鳥肌が立ってしまうかもしれない。詳細は控えるが、「これぞ「パラノマサイト」シリーズの醍醐味と言ってもいい仕掛けだ!」とだけ伝えておく。
前作の特徴はそのままに、面白さを加速させる新要素が追加
『パラノマサイト FILE 38 伊勢人魚物語』のゲームシステムは、前作とほぼ変わっていない。ポイント&クリックで気になる箇所を調べたり、キャラクターと会話をしたりしてストーリーを進める形式だ。そのほか、360度見回せる背景も、関連する伝承やオカルトネタを網羅した「資料」も前作と同じである。



また、他のチャプターで特定の行動をとることで新たなチャプターが開放されるという、群像劇ADVならではの仕様も健在だ。複数の視点で謎を考察する面白さがある一方で、行動次第でバッドエンドになるなど、間違えたら終わる緊張感も味わえる。
本作はマルチエンディングを採用しており、すべてのエンディングを鑑賞するには、各チャプターで正しい行動を選ぶ必要がある(バッドエンドを回収する楽しみ方もあるが)。つまり、矛盾やズレを修正する”つじつま合わせ”だ。人によっては面倒に感じる部分ではあるので、つじつま合わせの作業に面白さを感じられるかどうかで本作の評価は変わると思われる。

本作の新要素として、特定の条件を達成すると過去のチャプターが開放される「追想潜入」が追加されている。過去へ遡ることで新しいチャプターが開放されるとともに、他のチャプターで明かされなかった謎が紐解かれるというものだ。進行と補足の役割を担っており、過去・現在を行き来する複雑なシナリオに統一感をもたらすことに成功している。


ほかにも、「素潜り」のミニゲームも印象的だった。主人公の水口勇佐を操作し、海底に生息する海産物(ウニやアワビ、サザエなど)を獲るというものだ。息が切れる前に海産物を獲り、海上に浮かぶ漁船へ戻ればクリアとなる。




ただのミニゲームかと思いきや、海女ランクを上げる、海産物の図巻をコンプリートさせる、能力を強化するなど、無我夢中で遊びたくなるような魅力があった。シンプルな内容ながらも中毒性が高いため、ストーリーそっちのけで素潜りに興じる自分がいた。アクション性の高いミニゲームを用意するとは驚き以上の何物でもない。
路線転換、個性強めのキャラ、オカルトネタに魅了された
ここからは、『パラノマサイト FILE 38 伊勢人魚物語』をプレイして気になった3点を挙げたい。
最初に気になったのは、ホラー演出だ。前作は魑魅魍魎が蠢く演出や、360度ビューを活かしたジャンプスケアが印象的だったが、本作はホラー演出が抑え気味であった(お約束的なサービスは多少あるが)。どちらかと言えば、オカルトの不気味さと爽やかな青春模様が勝っているように感じる。

前作のおどろおどろしい雰囲気が減ってしまい少し残念に思ったが、実際にプレイしてみると、本作の路線転換は申し分ないという結論に至った。ホラー要素が抑えられているものの、それでも「パラノマサイト」シリーズの魅力は損なわれていなかったし、満足いくプレイフィールも得られたからだ。
ちょっぴり不気味な青春ストーリーといった感じで、筆者のバイブルである映画「学校の怪談」シリーズを思い出した。

次に気になった要素は、個性が強いキャラクターたちの存在だ。テンションが独特すぎるファンタジー作家をはじめ、赤い割烹着が目立つ謎の主婦、オカルト好きのエクソシストなど、一度見たら忘れられない魅力を放つキャラクターが登場する。
基本的にはシリアスな和風伝奇ミステリーなのだが、癖が強いキャラクターが勢ぞろいだからか、個性と個性をぶつけて笑いを誘う場面が顕著だった。ボケとツッコミが妙に冴えていて、前作以上に笑った記憶がある。ホラーを抑えた代わりにコミカルな要素を増やした点も、『パラノマサイト FILE 38 伊勢人魚物語』の魅力かもしれない。




最後に気になったのは、ストーリーを盛り上げてくれるオカルトネタの数々。作中のカギを握る人魚はもちろん、人魚のミイラ、八尾比丘尼など、オカルトマニアがニヤリとするネタが多く出てくる(前作に関連するワードも)。
ゲーム内の資料を読めば読むほど濃いネタに引き込まれていき、次第に知的好奇心も湧いてくる。ストーリーをプレイするだけでなく、ストーリーの根底にあるオカルトネタを読む面白さも「パラノマサイト」シリーズの醍醐味。情報の網羅性もそうだが、説得力のある仮説や考察の余地があるネタも興味深いところだ。かなり読み応えのある内容なので、余裕のあるときに目を通しておくといい(謎解きのヒントも隠されているため)。



まとめ:シリーズファンを100%満足させる傑作

『パラノマサイト FILE 38 伊勢人魚物語』は、シリーズファンの期待に応えてくれる作品であった。知的好奇心を刺激させるストーリーに引き込まれ、二転三転する展開やあっと驚く仕掛けに度肝を抜かれ、怒涛の勢いでエンディングまで読み進める自分がいた。
往年のサウンドノベルゲームを想起させるクオリティで、傑作を読み終えたときの余韻を感じたほど。文句なしの面白さを実感でき、満足の気持ちでお腹がいっぱいだ。ああ、記憶を消してもう一度遊びたい……。
そんな『パラノマサイト FILE 38 伊勢人魚物語』は2月19日に発売される。シリーズの最新作をプレイしたい人、和風伝奇ミステリーを思う存分堪能したい人に強くおすすめできるゲームだ。懐かしのポイント&クリックADVと、和風伝奇ミステリーの妙味をとくと味わってほしい。そして、”衝撃すぎる結末”も……。
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