- 文●いちえもん 編集●ハッチ
学生さんがゲーム業界を志望する動機になるようなイベントを継続したい
次に伊集院 勝氏に話を伺った。

――コンペティションを始めようとしたきっかけは?
伊集院氏:2024年に、今回のクラウド環境を使って近畿大学で情報学実習というのをRE ENGINEを使って、2週間くらいの実習を行ったのがきっかけになります。そこでは、今回のような本格的なものではなく、我々が提供したアセットを使ったゲームの遊びの部分だけを作ってもらうという実習だったのですけれども、そこでいろいろな作品を作ってもらって、それが我々にとって手応えになりました。それを日本国内で広げられないか、というのが発端になります。
そこから、もうどうせ授業やるならコンペティションをやったらいいんじゃないかと、一気に規模が大きくなりました。
――準備やいろんな学校への問いかけはどう行ったのですか?
伊集院氏:いくつかの学校には声をかけ、その後一般公募として、応募した中から選んで、最終的に93チーム集まって、そこから15チームを選抜させて頂きました。
――選抜の方法は?
伊集院氏:各チームのビルディング状況や、企画書を送って貰いました。また、今までにチームで作った作品があれば出して貰い、それらを総合して選抜させて頂きました。
――今回のシステムは、近畿大学で行なった際と同じですか?
伊集院氏:基本的には、近畿大学の実習で使ったシステムを踏襲しています。しかし、近畿大学で行なったのは、授業の一環なので、誰が使うのかこちら側で完全に把握していました。今回、15チームでいろんな人に触って貰おうという形になったので、セキュリティー面の強化を行いました。
また、自分たちが作ったアセットを取り込んで、自由に使って貰うなどのシステムは、追加で整備しました。
――クラウド上で使うシステムは、実際にカプコンさんで使っているものですか?
伊集院氏:基本的には授業用に作りました。今は弊社は基本出社の形なのですが、以前の在宅勤務の際に遠隔地で使わないといけないというシステムが大元になっています。それをどんどん拡張していき、それが学生向けの授業で使えるんじゃないかという過去資産の流用から、今回のコンペに繋がったという訳です。
――学生さんの支援はどういった形で行なったのですか?
伊集院氏:社内の人間以外は、RE ENGINEについて知らないので、マニュアルやチュートリアル、サンプルプログラムなど、エンジンと一緒にいろんなものをお渡しして、それを見て勉強して頂くような体制を整えていきました。さらに、学生さんが自由に書き込みできるサポートサイトを作って、可能な限り早く答えられるような仕組みを導入しました。
その上で、月に1回や節目とかにテレビ会議で、学生さんと困っていることなどを聞くなどのコミュニケーションを行いました。
――15チームと毎月1回行っていたのですか?
伊集院氏:そうです。チームに正、副2人のメンターを付けて、そのメンターが継続的にサポートするようにしました。
――ほぼ全員がRE ENGINE初めて触るなか、あれだけの作品を作られたことに、どう思いましたか?
伊集院氏:正直すごいな学生さんと、驚いたり、嬉しかったりしました。
――御社の今後にも活きるのではないですか?
伊集院氏:そうですね、学生さんに使って貰うならマニュアルを整備しないとダメだとか、実際にいろいろと整備し、いろんな質問が来て、これは説明が足りない、もっとこうした方が分かり易かったよね、とか気づきや反省点が出てきました。その次のステップとして、毎年入ってくる新入社員教育に活かせると思います。
――教育するというのもすごく大切ですものね。
伊集院氏:我々としてはゲーム業界に入ってくれる学生さんが多い方が、業界的に盛り上がるので、そういった導線が太くなるような形で、ゲーム業界に勤めたいと思って貰えるような、そういう思いでサポートだったり、メンターの仕組みだったりとかを、いろいろ考えました。
――今回学生さんが触ったRE ENGINEは、実際に開発に使っているフルアクセス版ですか?
伊集院氏:半年間という期間では、使用できない機能をお渡しすると学生さんを迷わせるのではないかと思い、我々がこの機能を使うのは無理だろうと思う機能は外させて頂きましたが、基本的にはプロの現場で使っている環境と同じものになっています。
――学生さんのRE ENGINEの使い方を見て、感じたことは何かありますか?
伊集院氏:チームの大小があるので、すべてのタイトルではありませんが、結構グラフィックスの機能とか使ってくれているなーと驚きました。攻めてるタイトルは、ちゃんと攻めてるし、小さいチームは我々が開発で重要視しているイテレーションの機能を上手く使っていましたね。
RE ENGINEではコードを1文字書き換えた後、10分、15分待つのではなく、コードを書き換えたら即座に反映されて、動くような、イテレーションがやりやすいシステムになっています。そういったところを上手く使って、ゲーム性を担保するための試行錯誤をして、いい形で作ってくれているなーと思いました。
――結構フレームレートが出ているゲームがありましたね。
伊集院氏:学生さんにアンケートを取らせて頂いたのですが、「エンジンが軽いです」「オブジェクトをたくさん出しているのに、全然処理落ちしないです」とスゴイ驚かれていたので、それはすごく嬉しかったですね。
――今後の展開は?
伊集院氏:カプコンでは2019年、2022年、2023年と今まで3回、CAPCOM Open Conferenceを行ってきました。そのうち2022年は、学生さんにRE ENGINEを触って貰い、どうやってゲームを開発しているのかというのを、実際に体感して貰うようなイベントを行いました。
また、次回どういうい風になるか分からないですけれども、今回のようなコンペやオープンカンファレンスだったりなど、そうした取り組みは継続してやっていきたいと思います。
その時の状況にもより、変わってくるかもしれませんが、学生さんがゲーム業界を志望する動機になるような、なんらかの形で継続していきたいです。頑張って予算取ります(笑)

コメント