- 文●ハッチ
AI作業に適したAMD製構成のPCなどを紹介
次にエルザ・ジャパンの三好 正行氏が登壇し、同社の取り組みについて紹介した。

エルザ・ジャパンはAMD製CPUでAIやHPCの開発・実行するために用意されたオープンソースのソフトウェア「ROCm」のTEST Driveプロバイダーで、Ryzen Thredripper PRO 9975WXと、Radeon AI PRO R9700を2枚搭載した環境をリモートで7日間無償で利用できるサービスなども行なっている。
また、そうしたAIやHPCようのハードウェアと、ROCmについての説明、実作業用の同社が販売するPCについても紹介した。一部実機は、前述したように会場に展示されていて、試すこともできた。



ゲームメーカーの現場でも最新Ryzen&Radeon環境は今後活躍する!?
イベント前半の最後に登壇したのは、セガのソニックを手掛けるチームの阿部 浩之氏。阿部氏は以前からデザイナーから「ハイスペックPC」が欲しいと要望はあったものの、PCや高性能なビデオカード(ボード)は高額で、必要性や効果を検証する手段がなく、導入に踏み切れなかった。

しかし、AMDより検証用の機材が提供されることで、今回ハイスペック導入効果、デザイナーによる性能検証を実施、業務への効果・影響を定量・定性の両面から評価したという。
セガはデザインテクニカルアーティスト(TA)チームと、『Sonic Racing Cross Worlds』プログラムチームの2チームでAMD「Ryzen 9 9950X3D」とAMD「Radeon RX 9070 XT」を搭載したPCを使用。そのうえで、TAチームは既存PCより高速に処理でき、ドライバーの問題でたまに描画の不具合などがあったり、CUDAやDirectXの制限があるなかでの不具合に気付けるメリットがあったと語った。

一方で、『Sonic Racing Cross Worlds』プログラムチームでは、GeForce RTX 4060 Tiという、それまで使用していたGPU環境と比較して安定動作し、60fps(『ソニックレーシング クロスワールド』は60fpsが上限)に張り付き、コスパは良好だと感じたと言及した。


また、AMD「Radeon PRO W7900」でも検証し、オープンワールドのステージ作成に不可欠なハイトフィールド処理(起伏のある地形を作成)において、GeForce RTX 4090とほぼ同等の処理時間だったと紹介。

そのうえで、16km規模のユニークな遠景地形生成の実績から、8192の倍数で処理可能な最大サイズを検証したところ、4倍の32768の処理はビデオカード以外でトラブルが発生したものの、Radeon PRO W7900は処理が行なえそうだったところ、GeForce RTX 4090ではメモリ不足で処理ができなかったと語った。

そのうえで、Radeon PRO W7900は高解像度地形処理においては優れたメモリ性能があり、実作業環境での高い安定性と同時処理能力を有し、GPUメモリ不足を気にすることなくUnreal EnginなどやSubstance系ソフトとの並行作業が可能なため、今後の広大かつ高密度なステージや、高負荷のシミュレーションを見据えた業務環境において、非常に有力な選択肢だと評価した。
さらに、パブリシティ業務において、Radeon PRO W7900は高負荷業務で高い性能を発揮できることが確認でき、その成果を踏まえて新規プロジェクトのグラフィック検証や、『Sonic Racing Cross Worlds』のパブリシティ業務用に1台ずつ導入したという。
検証としては、『Sonic Racing Cross Worlds』の動画キャプチャ作業において、キャプチャの長時間化、高負荷による中断、高解像度による処理落ちが課題とされてきたが、比較機のGeForce RTX 4060のPCでは、ゲームの映像を高解像度でキャプチャーした際にカクカクとした映像になったところ、Radeon PRO W7900搭載検証機では、滑らかな映像が作成できたとしている。

さらに、AMD Radeon AI PRO R9700と、GeForce RTX 5060 Tiとでレンダリング処理時間を比較したところ、R9700の方が最大50秒ほど高速だったとのこと。50秒と聞くと差は大きくないように思えるが、1日中の作業になるため、数をこなすとその差は意外にも大きく、非常に有用とのことだった。


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