- 検証/原文●duck 編集●ハッチ
「Memory Presets」をベースにメモリの細かな設定を行う
「ROG MAXIMUS Z890 APEX」には、ROGの上位版マザーボードにしか搭載していない「Memory Presets」が利用できる。「Extreme Tweaker」タブ内の「DRAM Timing Control」を開き「Memory Presets」を選択する。

「Memory Presets」には、非常に高いクロックとレイテンシが自動設定されるプロファイルが並んでいる。それぞれのクロックで、よく使われる高速タイミングをPrimary Timings、Secondary Timings、Third Timingsまでが、きっちりとプリセットされているが、そこまで身構える必要ないという。
たとえば「Hynix 8400 1.5v 2x16GB ADIE」というプリセットは、オーバークロックに適した「Hynix A-die」メモリを持っている人でしか使えないというわけではない。また、プリセット名にある8400MHzで動作させる必要もない。
実際にプリセットを選択して設定を適用しても、電圧などは細かく自動設定されるが、目標となる動作クロックを指定する「DRAM Frequency」は「Auto」のまま維持される。つまり、プリセットによって電圧などの設定を利用しつつ、DRAM Frequencyは自分のメモリに合わせて任意のクロックに変更できるわけだ。

つまり、8400MHzは厳しくても、サードタイミングまでバランスよくプリセットされた設定はそのままで、たとえば8000MHz以下にダウンクロックして使うことが可能。これで動く可能性は格段に上がるだろう。
メモリクロックを控えめに設定することで、高クロック動作のハードルが下がり、安定して動作する可能性も高まる。メモリに合わせてクロックを調整しながら、プリセットによる細かな設定の恩恵を受けられるのが、この機能のメリットといえる。

メモリタイミングの調整に慣れていない人にとって、数十項目にも及ぶ数値を、いきなり手動で設定していくのは至難の業だ。どの項目をどれくらい変更すればよいのか、見当もつかないという人も多いはずだ。
「Memory Presets」は、そういった時に活用する。あらかじめバランスよく調整された設定をベース(お手本)にして、メモリクロックを上げ下げしたり、各タイミングを詰めたり緩めたりしながら、自分のメモリに合った設定を探っていける。
つまり、ゼロからすべての数値を設定するのではなく、プリセットを出発点として試行錯誤を重ね、自分だけのオリジナル設定を追求できるわけだ。
では、実際の手順を見ていこう。今回、duck氏は今回はひとまず「Hynix 8400 1.5v 2x16GB ADIE」を選択している。そのうえで、duck氏はプリセットの名称に近いスペックのメモリを持っている人はそのまま適用し、動作状況を確認しながら微調整していく。一方、プリセット名が示す仕様とは大きく異なっていても、今回使用する「ARK-5600-A-die」のように、設定次第で高クロック動作を狙えそうなメモリであれば、より高クロックに挑戦してみる価値はあるとしている。

設定を適用した状態でPCが正常に起動するかを確認する。起動しない場合や、起動しても動作が不安定な場合は、メモリクロックを1段階ずつ下げながら、正常に動作する設定を探していく。ただし、CUDIMMの場合は、クロックを下げるだけでなく、タイミングを少し緩めて試す方法もあるとのこと。
安定して動作するクロックが見つかったら、Presetsによって自動設定された数値を参考に、Primary Timings、Secondary Timings、Third Timingsの順に調整していく。
プリセットの適用で正常に起動できた場合は、Secondary Timings以降をいったんAutoに戻し、さらにメモリクロックを引き上げてみる方法もある。今回のプリセットは、8400MT/s・CL36を前提とした設定になっているため、Secondary Timings以降もその動作条件に合わせた値になっている可能性がある。そのままクロックを引き上げると、ほかのタイミング設定がボトルネックとなり、高クロック動作の妨げになる場合があるからだ。

duck氏はクロックを引き上げた結果、起動しなくなった場合は、Primary Timingsを緩めて再度試すことを提案している。今回はメモリ電圧1.5Vからスタートしているが、設定によっては電圧を引き上げることで動作が改善する可能性もある。必要に応じて段階的に昇圧し、最大1.6V程度までを試してみようとしている。
そのうえで、duck氏は高クロック動作を追求するだけでなく、反対にメモリクロックを下げ、メモリタイミングをさらに詰めていき、自分のメモリに適した設定を探っていくよう提案している。
ここまでの方法を行っていくと、以下最低3パターンの選択肢ができるはずだと、duck氏は語っている。
- プリセットどおりか、それに近い安定した設定パターン
- 高クロックだがタイミングは少し緩いパターン
- クロックは低くなったがタイミングをタイトに絞ったパターン
それぞれ、サブタイミングはAutoのままなので、タイミングは自動設定されてると思うが、自動設定と8400のプリセットを見比べながらお手本にして、Primary TimingsからThird Timingsまで設定していく。
これまでを踏まえ、duck氏は今回「Hynix 8400 1.5v 2x16GB ADIE」を試したところ、すんなり起動して各種ベンチマークも動作したが、不安定だったという。そこで、電圧を1.55Vに上げたところ、DDR5-8400MHzプロファイルで各種ベンチマークも安定して完走し、CL38のDDR5-8600MHzでも問題なく動作したとしている。

高クロックでのメモリ動作を狙う場合は、電圧の調整も重要になる。そこでduck氏は「High DRAM Voltage Mode」を有効にして電圧制限を解除し、「DRAM VDD Voltage」と「DRAM VDDQ Voltage」をそれぞれ1.55000Vに設定。さらに、「System Agent Voltage」も1.30000Vに設定している。各項目は「Extreme Tweaker」の中にある。



duck氏は、もしこれで安定しない場合は、「Extreme Tweaker」の「Advanced Memory Voltages」内にある「Memory Controller Eventual Voltage」を1.40000Vに設定するようにとしている。
注意すべきは、通常よく弄る『Memory Controller Voltage(VDD2)』の方ではなくて『Memory Controller Eventual Voltage』の方の項目を変更することだ。
「Memory Presets」を利用し、4パターンの設定で性能をチェック
前述したプロセスに従って試し、DDR5-8000MHz~8600MHzの範囲でクロックとタイミングを調整すると、以下4パターンをできあがったという。
- DDR5-8600:CL38-49-49-47
- DDR5-8400:CL36-48-48-45
- DDR5-8200:CL36-47-42-36
- DDR5-8000:CL34-46-46-44
4パターンのベンチ結果は以下のとおりで、性能差は僅差だった。しかし、その中でも比較的安定して動作し、結果も良好だったのが、CL36-48-48-45/DDR5-8400MHzの設定だ。そこで、今回はひとまずこの設定をベースに、さらに細かなタイミングの調整を進めている。


計算式 :
DDR5-8600/CL38(38 × 2000 ÷ 8600=8.83ns)
DDR5-8400/CL36(36 × 2000 ÷ 8400=8.5ns)
DDR5-8200/CL36(36 × 2000 ÷ 8200=8.7ns)
DDR5-8000/CL34(34 × 2000 ÷ 8000=8.5ns)
またはレイテンシ(ns) =(CL ÷ 周波数)× 2000
メモリのタイミングを限界まで詰めていくのは、オーバークロックの醍醐味のひとつ。パーツがどこまで耐えられるのか、その限界を探るうえでも良い経験になる。
ただし、duck氏は詰めすぎには注意が必要とも語っている。ベンチマークですらギリギリ通るレベルだと、逆にスコアも落ちてしまう。まして、安定動作で常用を狙うとなるとガッツリ詰めたとこから、全体的にワンランク、ツーランクくらい緩めないとMemTestはパスできないので、それを逆算しながら調整していくのがコツとなる、としている。

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