- 文●ハッチ

ASUSは10月16日に、マイクロソフトとパートナーシップ契約を締結し、共同開発をした最新のゲーム機型PC「ROG Xbox Ally X」と「ROG Xbox Ally」を発売した。
Windows搭載のゲーム機型PCは、中国を拠点とするGPD社がクラウドファンディングで融資を募った末に2016年に「GPD WIN」を発売してから今日まで数多くのメーカーが参入。ASUSも2023年にASUS ROG Ally(ROG Ally)を発売し、翌2024年にメモリ容量などを増強したASUS ROG Ally X(ROG Ally X)を販売してきた。
既存のゲーム機型PCは、システムは通常のPCと変わらない。そこに各社独自の管理アプリや、クイックセッティング機能を搭載してユーザビリティーを向上させてきた。しかしながら、一部スライド式のキーボードなどを搭載するモデルはあるものの、Steamなどのプラットフォームに初回ログインする場合などにはキーボードがあった方が便利であるなどの不便さがあった。
ROG Xbox Allyシリーズは、起動したらまずゲーム機のXboxと同じUIのフルスクリーンエクスペリエンスが立ち上がり、ゲームをプレイするだけなら、デスクトップを表示しなくても完結するシステムをマイクロソフトとの共同開発により実現。
また、上位モデルのROG Xbox Ally Xは、AI専用のNPUを搭載したCPUを採用し、高いAI処理性能で今後追加される予定の、AIによってゲームをより快適にする機能に対応するなど、競合製品にはない優位性を持っている。
今回、そんなROG Xbox Allyと、ROG Xbox Ally Xをいち早くお借りしたので、実際の使い勝手や性能について詳しく紹介したい。
想定ユーザーが異なる2モデルを用意
ASUSはROG Xbox Allyシリーズの発表会にて、同社が調査したところ、ポータブルゲーム機型PCにユーザーが何を求めるかは、大別して2つに分かれるという。1つは性能を求めるユーザーで、もう一方はスペックは求めずカジュアルなゲームをプレイしたい、コスト重視のユーザーだ。

そのため、今回のROG Xbox Allyシリーズは、スペック違いで2モデルが用意されている。上位モデルのROG Xbox Ally Xは、CPUにAMD「Ryzen AI Z2 Extreme」(8コア/16スレッド、最大5GHz)を採用。メモリーは24GB(LPDDR5X-8000)で、ストレージが1TB SSD(PCIe 4.0×4)となっている。

CPUは既存のROG AllyおよびROG Ally Xが採用していたAMD「Ryzen Z1 Extreme」(ROG AllyにはRyzen Z1搭載モデルもある)とコア/スレッド数は同じだが、アーキテクチャーがZen 4からZen 5×3+Zen 5c×5に変更となっている。
また、メモリー容量に関しては、ROG Ally Xと同じ24GBだが、クロックがLPDDR5X-7500からLPDDR5X-8000に向上している。

昨今のインテルCPUは、高性能コアであるPコア(Performance Core)と、Eコア(Efficient Core)に分けられ、タスク管理を効率化している。それと似た形で、高性能コアのZen 5と、高効率コアのZen 5cが混合した構成になっている。
そのうえ、内蔵GPU(iGPU)は「Ryzen Z1 Extreme」と同じ12コア、2900MHzだが、こちらもアーキテクチャーがAMD RDNA 3から、より電力効率が向上しているAMD RDNA 3.5になっている。

特筆すべきは、AI処理に特化したNPUを実装している点。50 TOPSの処理性能を有し、今後追加されるAI機能を使用できるとしている。たとえば、マイクロソフトは特定のゲームにおいては、クラウドでシェーダーコンパイルを処理する機能を実装予定。
そのほか、Copilot+PCに統合される機能の自動スーパー解像度(Auto SR)のように、低解像度で動作するゲームをアップスケーリングし、高解像度化したビジュアルと滑らかなフレームレートを提供する機能を、2026年の初頭に実装予定との発言を行っている。そうした機能が、実装されてからすぐに使える点も、ROG Xbox Ally Xの利点と言える。
一方で、ROG Xbox Allyは、CPUにAMD「Ryzen Z2 A」(4コア/8スレッド、最大3.8GHz)、メモリー16GB(LPDDR5X-6400)、ストレージに512GB SSD(PCIe 4.0×4)を採用している。Ryzen Z2 Aは、アーキテクチャーがZen 2で、iGPUがAMD RDNA 2で8コア、最大1800MHzのRadeon Graphicsとなっている。


CPUはSteam Deckが搭載するカスタムAPUと同じアーキテクチャーで、コア/スレッド数だが、クロック(Steam DeckのカスタムAPUは最大3.5GHz)で若干勝っている。GPUもRDNA 2の8コアだが、TDPが15Wと26WのROG Xbox Allyよりも抑えられているため、Steam Deckよりは高い性能が期待できる。

いずれも、ディスプレイは7インチ(1920×1080ドット)で輝度が500nits、リフレッシュレート120Hz、応答速度7msのIPSパネルを採用。そのため、ROG Xbox Allyは若干重いタイトルは解像度を1280×720ドット(HD)画質に落としてプレイし、軽いゲームはSteam Deckよりも高解像度な1920×1080ドットのフルHDでプレイできるといった利点もある。
主なスペック | ||
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機種名 | ROG Xbox Ally X | ROG Xbox Ally |
液晶ディスプレー | 7インチ(1920×1080ドット、120Hz、500nits、グレア) | |
CPU | AMD「Ryzen AI Z2 Extreme」(8コア/16スレッド、最大5GHz) | AMD「Ryzen Z2 A」(4コア/8スレッド、最大3.8GHz) |
メモリー | 24GB(LPDDR5X-8000) | 16GB(LPDDR5X-6400) |
ストレージ | 1TB SSD(PCIe 4.0×4) | 512GB(PCIe 4.0×4) |
インターフェース | USB4、USB 3.2 Gen 2 Type-C、microSDXCカードスロット、マイクロホン/ヘッドホン/ヘッドセットコンボジャック | USB 3.2 Gen 2 Type-C×2、microSDXCカードスロット、マイクロホン/ヘッドホン/ヘッドセットコンボジャック |
通信機能 | Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.4 | |
バッテリー | 80Wh/4セル | 60Wh/4セル |
サイズ | 290(W)×121(D)×27.9~50.9(H)mm | |
重量 | 約715g | 約670g |
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